2019年夏、マイラー界でも大きな話題になったのが、ANAのビジネスクラス新シート“THE Room”の導入です。同時に、ファーストクラスも”THE Suite”として新シートがデビューしましたが、ビジネスクラスのシートにいたっては名前の通りまさに「部屋」と言えるほどバージョンアップしたことで大きな話題となりました。記念すべき2020年1発目のフライトで乗ることができたので、レビューしていきたいと思います。
ロンドン、NY、フランクフルトで導入
THE Roomは、ANAの長距離路線をこれまで飛んでいたB777-300ER型機の新仕様機として、2019年8月にデビューしました。当初は羽田―ロンドン線のみでしたが、その後、東京(成田・羽田)―NY線、羽田―フランクフルト線にも投入されました。
新仕様機は4クラス212席設定。ファースト8席、ビジネス64席、プレミアムエコノミー24席、エコノミー116席となっています。
新仕様機は、新造分と改修分合わせて計12機で、2021年にはすべて揃う見込みとなっています。
ANAは2010年にファーストクラスとビジネスクラスを現在のシートに刷新しているので、今回のリニューアルはまさに10年ぶりとなります。
当初は日本で初となる「全席通路アクセス可能なフルフラットのスタッガードシート」も、今ではすっかり国際的な主流になりました。今後はドアの付いた「個室」がビジネスクラスシートの主流になっちゃうんでしょうかね。
ANA史上最大・現行2倍のワイドシート
今回はNYでの年越し弾丸旅行の復路でたまたま新仕様機の特典枠が空いていたので、JFK―成田路線で元日に利用してきました!
ボーディングブリッジを渡って機内に入ると最初に見えるのが、大きな電光のウェルカムモニターです。日本らしく抹茶の背景。座席列の案内表示がデジタルで示されています。そして少しわかりにくいですが、写真左上、ギャレーの天井が少し丸みを帯びています。アーチ型の天井で開放感を演出し、機内に入った時の圧迫感を低減させています。
そしてこちらがビジネスクラスの新シート”THE Room”です。とにかく横幅が広い!
この角度からみると、ファーストクラスの座席かと見間違えるほどに空間が仕切られています。
こちらは窓側の1人座席。窓も近いですね。座席の横幅は、現行のANA BUSINESS STAGGERED(スタッガードシート)の約2倍となっています。
これまでは背もたれの隣に付いていたサイドテーブルはモニター側に移動しており、足を伸ばすスペースは従来通り1人分となっています。サイドテーブルが移動したことで背もたれ部分の幅を倍近く確保することができたんですね。
座席にはシートベルトが備えつけられています。
ヘッドカバーをめくると、ここにもシートベルトが。そうなんです、新仕様機ではビジネスクラスは胴だけでなく肩からもベルトで留める3点式に変更されています。
肩のベルトと胴のベルトはそれぞれ分離しているので、肩のベルトも忘れないように締めましょう。
自席から中腰で立ってみるとこんな感じです。前後の席の人は視界にほぼ入りません。
座ってみると、隣にはもう1人分のスペースが空いています。隣、空いてますよ(笑)
機内環境や付属品も新仕様で高機能!
シート部分以外を見てみても、新しい機能がたくさん追加されています。
窓のシェードは電動になっていて、ボタン1つで和紙のような質感のシェードが落ちてきます。
真っ暗にすることもできますし、1枚だけにして光を透過させることもできます。ここら辺も日本っぽさが伝わってきていいですね。
こちらのモニターは新シートの目玉の1つ。現行17インチのモニターは、なんと24インチの4Kモニターに大幅グレードアップ。機内パーソナルモニターで4K対応なのは世界初です。現行のファーストクラスでも23インチですから、ファーストを超える大きさです(ちなみに新ファースト”THE Suite”は驚異の43インチ。もはや家のテレビです笑)。もちろんタッチパネルとなっていて、直感的に操作できます。
モニターの隣にある収納スペースを開けると、雑誌類が格納されています。
雑誌類の隣には後で配られる水のボトルがちょうど収納できるスペースが空けられています。
コントローラーにもモニターがついています。
コントローラーでは、画面の操作はもちろん、ゲームをしたりCAさんを呼んだり読書灯を付けたりすることができます。
モニターの下には小物入れも。
足を入れるスペースは1人分となっています。
引き出して使えるメインテーブルは木目調の加工が施され、上品な仕上がりになっています。造りもしっかりしていて、簡単にたわんだりしません。
サイドには救命胴衣がわかりやすく収納されています。見せる収納ですね。
シートと窓(側壁)の間には仕様上どうしても隙間が空いてしまうのですが、きちんと防護網が設置されていて、万一小物やスマホなどが入ってしまっても下まで落ちないようになっています。
サイドテーブルにはこのようなボタンがついており、シートリクライニングや読書灯のオンオフが簡単にできるようになっています。
ちなみに、ライティングはパナソニックと提携して独自に開発されており、読書灯だけでなく食事をおいしく見えさせるライトなんてのもあります。
モニター横についているこちらのライトが、食事用のものです。
食事用の明かりは暖色系の光で、よりおいしく見えるようになるそうです。
背もたれの部分には、左右にそれぞれ読書灯がついています。
多段階式で明るさを調節できますが、2方向から照らすことによって不自然な影が出来にくく、手元をよりわかりやすく照らしてくれます。
さらに座席上部にはシーリングライト(目覚めのあかり)もついており、モニターから設定することで15分かけて消灯→設定時間の30分前に徐々にライトが点灯されるという機能も備わっています。
サイドにはイヤホンジャックと、充電用のUSBポートが備わっています。
モニター横の収納スペースの扉には、鏡や小物を収納するネットがかかっています。
収納スペースの下部にはコンセント、USBポートのほかに、HDMIポートもあります。これは現行のシートにはないアップグレードした部分です。
扉を閉めていても、コードが出る下部は動くようになっています。抜き差しも楽ちんです。
このためにHDMIケーブルを持って行きました(笑)自分のブログを機内の24インチパーソナルモニターに映し出すという何とも不思議な経験です。
ちなみに、HDMIケーブルは機内では貸し出してないそうです。
扉付きシートで個室空間を演出
THE Roomと名付けられたゆえんがここにあります。ビジネスクラスなのに、通路を隔てる扉付きという嬉しい仕様です。
ドアを閉めると、こんな感じ。立派な個室空間に早変わりです。
通路を歩くCAさんの視界には入ってしまいますが、通路を挟んだお隣さんの視界は全く気にならなくなります。
ちなみに通路から見るとこんな感じ。
通路に立てば中は少し見えますが、意図を持ってのぞかなければほぼ見えません。
フルフラットにして寝たときの視界はこんな感じです。
従来のシートに比べてより通路を歩く人が気にならなくなりました。パーソナルスペースとしては十分グレードアップしました。
隣、空いてますよ!!!(2回目笑)
アメニティも新仕様に
ビジネスクラスといえば充実したアメニティも特徴の一つですが、新仕様機ではアメニティも様変わりしています。
左には持ち帰りOKのスリッパと、機内用ヘッドホン。そして、なんと枕は2つもついてきます。下には西川と共同開発したシートクッションと掛け布団が用意されています。
ワイドシートなので、2つ横に並べられちゃうんですね。
こちらは女性に人気の高いスーツケースブランド「グローブトロッター」のポーチに入ったアメニティセット。
シートクッションには穴があいていて、寝た姿勢でもきちんとシートベルトが締められる造りになっています。
もちろん、従来通り数量限定でカーディガンを借りることはできますのでご安心を!
珍しい「後ろ向きシート」に搭乗
新仕様機のビジネスクラスは、次のシートマップのように向きが互い違いになっていることがわかります。
離陸前には、いつものウェルカムドリンクサービス。後ろ向きの座席に座りましたが、全く違和感はありません。
しばらくして離陸の時間となりました。プッシュバック、タキシングともまだ違和感はありません。滑走路でスタンバイ完了し、一気にブーストをかけて体にGがかかるようになって初めて、いつもと向きが違うことがはっきりとわかります。
上体が思ったよりも大きく手前に倒れ込みそうになるんですよね。なるほど、3点ベルト式に変更した理由がよくわかりました。
進行方向は写真右側ですが、窓をのぞくといつもとちょっと視点が違うことに気付きます。
これまで旅をしていた大陸がありありと見えるというのは、後ろ向きシートならではでしょうか。ちょっと寂しくもあります。
このように、パーソナルモニターの機外カメラからリアルタイムの映像を見ることもできます。
下方アングルのカメラなんて、なかなかゲームみたいで面白いです。
水平飛行に入ると、もう座っている向きは気にならなくなりました。
コース料理の食事もパーソナルスペースで
現地時間午前10時頃に離陸したため、水平飛行に入ってからすぐに食事の時間となります。長距離路線はコースで提供されるのでゆっくりいただきます。
ちなみに、料理の提供中は最低でも片方だけはドアを開けておくようお願いされます。そりゃそうですよね、サーブできなくなっちゃいますもんね。
まずはアミューズから。手前右から順に、ぶどうとクリームチーズのピスタチオボール、ヒヨコ豆のカナッペ、スモークダックと根セロリサラダのロール仕立て。ぶどうをクリームチーズで包んじゃう、発想が面白い一品です。
今回は洋食をチョイスしたので、アペタイザー「スモークサーモンのリエットとカプレーゼ 生ハム添え」とコーンスープ。組み合わせていただくと生ハムと塩気とカプレーゼが見事にマッチします。
そしてメイン。いつもはステーキを頼むのですが、往路でもステーキだったので復路は魚料理にしました。「大鮃のローストと海老のソテー ほうれん草のピューレとクリームソース」です。エビはプリップリで弾力があり、ヒラメも食べ応えがありました。3種のブレッドもオリーブオイルとともにいただきます。このエビ10本くらい食べたい。笑
デザートワゴンが運ばれてきました。好きなものをオーダーすることができます。内容は、 ティラミス、抹茶プリン、チーズ、フルーツです。
紅茶とティラミスをいただきました。
さらに、好きな時間に好きな食事をオーダーすることもできます。
今回は、かき揚げうどんをいただきました。
到着約2時間前に出される2食目は、和食をオーダー。
青梗菜と干し海老のお浸し、鰆西京焼き、ご飯とお新香です。味噌汁をかき揚げうどんに変えて出してもらいました。
「好きな時に頼めてもおなかいっぱいで食べられない」という方は、2食目をちょっとアレンジするのがオススメです!
トイレもリニューアル
途中で眠くなったので、トイレで歯磨きしてから横になることにしました。
トイレの壁が灰色の木目調になっています。従来の仕様に比べてより上品に見えます。
歯ブラシやマウスウォッシュが用意されています。ここは変わりませんね。
シンクは従来より幅広になっています。
飛び散った水滴を受け止める範囲が広がったので、清潔感がより増した気がします。
寝転んでネットサーフィンも楽々快適
フルフラットにして寝具を並べてみました。
もちろん足を突っ込むスペースは1人分しかないのですが、それにしてもこの見た目は本当にビジネスクラスの座席なのかと思ってしまいます。
こっちの角度からだと、1人分のスペースというのがよくわかります。上体だけでも横に動かせるスペースがあるというのは大きいですね。特に180cm以上の人だと、上体を曲げることで足を伸ばして横になれます。
ちなみに地味に嬉しかったのが、従来機の777-300ERでは機内Wi-Fiサービスが旧型でしたが、新仕様機ではWi-Fiサービス2に昇格している点です。旧型だとフルフライトプランでも100MBを使い切った時点で終了という謎仕様だったのですが、2ではどれだけ通信しても関係ありません。もちろん動画を見られるほど回線速度はよくありませんが、SNSをいじったりするくらいであれば問題なく楽しめます。
寝っ転がりながらスマホをいじっていれば、あっという間に着いてしまいそうです。
サプライズでメッセージカードをいただく
快適な空間であればあるほどもっと滞在したくなりますが、その分時間が経つのが早く感じるんですよね。
すっかり気に入った機外カメラで外の風景を楽しみます。
パイロット視点で着陸の瞬間を楽しむことが出来ます。
着陸のときは、いつもと違って背中にGがかかります。
無事に着陸しました!
降機前には少し雑談をしたCAさんからメッセージカードもいただけました^^
記念となる2020年元日フライトは新仕様”THE Room”で最高の年始めとなりました!
今年もたくさんお世話になりたいです^^
空の旅をより快適に過ごすためのオススメアイテム、「イヤホンアダプター」をご存じですか?
機内に用意されている音楽や映画などのエンタメプログラムを楽しむためには、イヤホンが必要です。イヤホンアダプターを使うことで、機内備え付けのノイズ軽減機能のないイヤホンではなく、普段自分が使っているイヤホンを機内でも利用できるようになります。
オススメはこちら、音響機器メーカー米大手"BOSE"(ボーズ)の機内用アダプター。一般的な3.5mmジャックを備えたイヤホン・ヘッドホン(BOSE製に限りません)であれば、問題なく利用できます。手のひらサイズのわずか約4cmで持ち運びも便利、価格も1600円程度で買えます。空の旅がより快適になるでしょう!
この記事へのコメントはありません。